熊本大学大学院自然科学教育部ニュースレター 森と風

教員特集
                           
地元の大学だからできることを、益城町が復興するまで続けていきます。 政策創造研究教育センター 准教授 円山 琢也
円山 琢也(まるやま たくや) プロフィール

1999年東京大学工学部都市工学科卒業、2001年東京大学大学院修士課程修了 (新領域創成科学研究科環境学専攻)
2004年博士(環境学)。2003年より東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻助手、2006年より日本学術振興会海外特別研究員、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、テキサス大学オースティン校客員研究員として勤務。2008年より熊本大学政策創造研究教育センター准教授を経て、2010年より大学院自然科学研究科にて研究指導・講義を担当し、現職に至る。

益城町の仮設住宅の現地調査を行い、生の声を伺っています。

Q:円山先生の研究テーマは?

「専門は交通政策分析、交通計画です。 “まちづくり”のひとつで、安全で円滑な都市交通を実現するための研究をしています。例えば、交通調査の改良に関する研究。これまでは『どこからどこに移動したか』などを専用の紙面に記入する方法で調査が行われていましたが、これだと費用がかかるし、記入する住民のみなさんの手間もかかる。また正確なデータがとれにくいなどの課題がありました。そこでスマートフォンに搭載されているGPS機能を使って、自動的かつ正確な交通行動の記録をとる研究を進めています。また、調査ではわからない課題や問題は、公民館にて高齢者へ直接インタビューして探っています。この調査方法は、現在進めている益城町仮設住宅の聞き取り調査にもつながっています」。

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Q:熊本地震、その復興について、現在どのような関わりをしていますか。

「ひとつは益城町役場からの依頼で、益城町の仮設住宅にお住まいの方々の聞き取りを行っています。私の研究室の学生たちがメインとなり、他研究室、他大学の方々にもお手伝いをいただきながら、ふたり一組で一戸一戸お伺いしています。現在までに、聞き取りへのボランティアでの参加者は延べ人数で300人を超えています。どのような調査をしているかというと、ひとつは仮設住宅の環境改善について。例えば困っていること、不安なことなどを伺っています。また、今後の住まいにどのような考えを持たれているかも聞いています。

ほかにも、8月から『益城町復興計画策定委員会』が開催され、12月計画策定を目指して10年計画で進める復旧・復興の方向性と益城町の将来像を探る議論がスタートしました。行政としての復興計画立案、現地調査をしている私たちが連携していくことで、行政と住民とのつなぎをしていく役割を担っています」。

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Q:益城町での現地調査は、将来的にどのように役立ちますか。

「一世帯一世帯で抱えている問題や悩みは異なりますので、じっくり話を伺って、その場で対応できることは行い、益城町役場に伝えるべきことは伝えて、少しでも暮らしの改善に役立ってもらえればと思っています」。

変化したコミュニティ、そこに積もる問題をどのように解決していくか。

Q:まだ調査の最中ですが、現時点でなにか見えてくるものはありますか?

「仮設住宅にお住まいの方は、高齢者が多い。おそらく若い世代は見なし住宅か益城町以外に移り住まれたのではないか。仮設住宅に応募された方は『益城町に住み続けたい』と希望される古くからの住人です。そんな高齢者のみなさんの暮らしをどう手助けしていけるかというのが課題。また、高齢で免許を返上されたりなど、車を運転できない方が多いのも問題のひとつ。仮設住宅の周辺には病院や店、バス停などがない場所も多いので、生活の不便をどのように解決するかも早急に考えてなくてはなりません。そのほか、コミュニティの変化などで、引きこもってしまう高齢者が増えるのも危惧しています。このような問題を、私たち大学の調査や分析で、どのように補完できるかを考えています」。

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Q:大学での研究と益城町の現地調査について。

「現地調査、都市計画という意味では、仮設住宅の聞き取り調査や復興計画もこれまでの研究とつながっています。現在私は益城町役場の机をお借りして、役場のお手伝い業務も行っています。例えば、他大学や機関から益城町の調査依頼が役場にきたりしますが、同じ内容の調査を複数から行われると、住民のみなさんの負担にもなりかねます。また役場はまだまだマンパワーが足りていない状態で、不眠不休で頑張っている職員のみなさんがそれらの調整を行われるのも大変。そこで私が調査機関の調整などを行ったりしています」。

学生だから聞き出せることがある。

Q:地元の大学だからこそできることとは?

「普通ならば10年20年と長期で行う都市計画を、地震後の益城町は早急に行わなくてはいけません。短期に集中的に取り組むこと、また今後も長くおつきあいしていくことに対応できるのは、地元の大学ならではだと思います。学生調査団はボランティア参加ですが、現地の生の声を伺えるのは、学生自身の学びにもなっています。また役場にもマスコミの方にも言えない悩みや不安も、『学生さんには話しやすい』『若い方と会話をすることで元気になれた』とおっしゃっていただけることも多い。最初は『仮設住宅に入れただけでも助かります』など前向きな回答をなさるのですが、雑談をかねて30分から1時間くらいお話をしていくと、ご本人たちも気づかなかった不安や悩みなどを聞き出すこともできたりします。

そこまでお話を聞くために学生たちは、地名の読み方や近所の施設名をあらかじめリサーチして、住民の方との会話に自然と入れるように準備して進めています。信頼関係を構築していくことが重要なので、調査は学生たちにとっても大きな学びとなっています」。

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Q:益城町の復興について、円山先生の思いを。

「益城町が復興するまで、活動を続けていきます。地震によりマイナスからのまちづくりとなりますが、住民のみなさんが再び安心して暮らす日がくるまで、おつきあいしていければと思っています。まず益城町の人口が減らないようにしたい。そのためにも若い世代の人たちの意見を踏まえたまちづくりを考えていかなくてはと思っています」。

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