共同研究

農薬シーズ創出を目指した真菌由来の揮発性有機化合物の研究

塚本佐知子x人羅勇気x戸田敬

真菌が産生する揮発性有機化合物を同定し、植物病原菌、
植物病害虫、および植物に対する作用の解明と農薬シーズの
創出に向けた研究を行う

天然物×画像解析による農薬・医薬・機能食品のシーズ探索

人羅勇気x塚本佐知子x檜垣匠

機械学習による画像解析を天然物スクリーニングに応用し、
骨粗しょう症の治療・予防薬シーズや健康食品への利用が
期待される天然物を探索する

植物培養細胞アッセイ系による農薬シーズ探索

檜垣匠x塚本佐知子x人羅勇気

天然資源から植物細胞の成長を制御する化合物を探索する

作物生産に関わる形質および成長制御物質に対する酸化グラフェンの効果

相田光宏x速水真也

植物体の成長に必要な細胞は、茎と根の先端にある
頂端分裂組織によりつくられる。頂端分裂組織の活性はオーキシンや
サイトカイニンなどの成長制御物質(植物ホルモン等)によって
調節され、葉・茎・根の成長や枝分かれ、果実・種子の収量など、
作物の様々な特性に影響する。

本プロジェクトでは高い表面積と吸脱着性を有する
酸化グラフェンが、植物の生育および植物ホルモンの生理活性に
及ぼす効果を検証する。さらに、植物顕微鏡試料の
剥離防止剤としての応用可能性についても検討する。

養殖魚の性統御における脂肪酸の影響とその影響メカニズムの解析

北野健x谷時雄x井手上賢

養殖魚においては、ウナギやヒラメのように雄より雌の方が成長が早い魚種や、トラフグのように
精巣に価値がある魚種が存在しており、それぞれ全雌生産および全雄生産の技術開発が
求められている(図1)。北野らは、脂肪酸受容体(PPARα)の活性化が雄化を引き起こすことを
明らかにしており、性統御における脂肪酸の利用が示唆されている。一方、谷、井手上らは、
脂肪酸の一つであるミリスチン酸が、生殖細胞特異的な細胞内構造体(nuage)の形成を阻害させる
ことを見出しているが(図2)、その詳細な分子機構は不明である。そこで本研究では、養殖魚の
性統御において脂肪酸が利用できるかどうか、その分子機構は何かを明らかにすることを目的に、
その第一歩として以下のテーマを実施する。

1. モデル魚であるメダカに脂肪酸を投与し、どの脂肪酸が雄化を引き起こすかを明らかにする
(北野担当)。
2. カイコ卵巣由来の培養細胞に様々な脂肪酸を投与し、培養細胞内のnuageを含む細胞内構造体の
変化を調べて分子機構を解析する(谷、井手上担当)。

これらの結果を総合して脂肪酸の影響メカニズムを明らかにし、実際に養殖魚に
利用できるかどうかを評価する。

世界初の分裂酵母焼酎/日本酒の製造:分裂酵母ジャポニカスKumadai株の育種開発

谷時雄x戸田敬x井手上賢

今まで醸造に使われたことがない分裂酵母ジャポニカスの
吟醸香高生産株を育種し、焼酎/日本酒の味や香りに今までにない
多様性を産み出し、世界初の分裂酵母焼酎/日本酒を製品化することを
目指す。谷/井手上で既に分離済みの吟醸香成分カプロン酸エチル
高生産株であるKumadai-T11号株を親株に、他の代表的な吟醸香で
あるβ-フェネチルアルコールや酢酸イソアミルを更に高生産する
多重変異株のスクリーニングを行う。得られた株の培養液について、
戸田研でガスクロマトグラフィーによる香気成分分析を実施し、
焼酎や日本酒、クラフトビールの醸造に適した株の選択を行う。
候補株の小仕込み試験等を熊本県産業技術センターで実施し、最終的に
醸造に適した株を同定する。熊本地域の酒蔵とも連携し、育種株による
世界初の分裂酵母焼酎/日本酒/クラフトビール製品化を目指す。

養殖魚性分化コントロールへのカイコの利用

新留琢郎x北野健

ヒラメやウナギの養殖において、雌への誘導がその市場価値を高める、あるいは、完全養殖に
おける重要な鍵となる。これまで北野らは、メダカの性分化に関わる分子メカニズムについて
明らかにしており、性分化を制御する脂肪酸受容体(PPAR)受容体の同定はもちろん、
関連する特定の脂肪酸を指摘している。

一方新留らは、カイコがつくるシルクタンパク質を使った医療材料の発を進めているが、
その中で、遺伝子組み換えカイコを作製し、繭やサナギ、幼虫の体液に組み換えタンパク質を
発現させる技術を構築している。

そこで本研究では、養殖魚の性分化をコントロールできる飼料としてカイコの幼虫あるいは
サナギが利用できないか、その予備的な試験を開始する。
1. モデル養殖魚としてメダカを使い、カイコの幼虫あるいはサナギがメダカの飼料となり
得るかを検討する。まずはペースト化、乾燥粉末化が想定される。
2. 性決定を制御するであろう脂肪酸の割合を調整したカイコ飼料をメダカ稚魚に投与し、
メダカの性分化への影響を評価する。

酸化グラフェンによる乾燥地での農業

速水真也x澤進一郎

乾燥地にとって水は極めて重要な資源である。限られた水を有効的に
利用することは、人類の生活のみならず、乾燥地の作物生産において
重要である。限りある水を農業に有効利用するためには、保水が
重要なポイントとなる。通常土壌での保水力には限りがあるため、
土壌改良材として保湿剤を利用することが望ましいと
考えられている。現在、吸水性ポリマーなどが実用化に向けて
研究開発が進んでいるが、本研究では、新たな保水材として、
酸化グラフェンを提案する。

気孔を標的とした植物生育調節剤の探索

檜垣匠x人羅勇気x塚本佐知子

気孔は植物の葉や茎の表面にある小さな器官であり、環境に応答して
開閉状態を適切に制御します。

本研究では、気孔開閉運動を制御するタンパク質の細胞内局在を
指標に、本研究グループが得意とする天然資源と画像解析を
駆使して、低環境負荷の植物生育調節剤
(バイオスティミュラント)を探索します

魚の酸化ストレスに対する活性硫黄の影響と性分化との関連に関する研究

北野健x新留琢郎

北野らは孵化後のメダカに酸化ストレスを与えると、遺伝子型が
メスでも表現型としてのオス化を引き起こし、そこへ、システインの
誘導体(抗酸化物質)を与えると、その効果はキャンセルされる
ことを発見した。一方、特殊な硫黄化合物が強力な抗酸化剤として
機能することを明らかにしており、新留がさらに様々な構造をもつ
硫黄化合物を合成し、より効果の高い硫黄化合物の探索を
進めている。

本研究では、新留がもつ様々な硫黄化合物をメダカに与え、その性分化の過程を、表現型はもちろん、体内のグルタチオン量を評価する
などして、体内の酸化還元状態と成分化の関わりについて明らかにする。さらにこの知見は、市場価値の高いメスの選択的養殖にもつながり、
水産業への貢献も期待される。

研究体制
1.様々な硫黄化合物の合成(新留)
2.メダカ稚魚への投与およびメス化への効果(北野)

パルスパワーによる真菌の有用成分の増産:植物の成長促進物質の産生誘導

人羅勇気x塚本佐知子x王斗艶x浪平隆男x檜垣匠

真菌は、医農薬品や機能性成分など様々な有用成分を生産する。
また、真菌由来の成分が植物の成長に重要な役割を果たすことから、
農業分野への応用が期待されている。

パルスパワーは超高出力の瞬間的なエネルギーで、農業や工業、
医療など幅広い分野で利用されている。パルスパワーの刺激により、
シイタケの増産効果が報告されているので、真菌に対しても成長や
代謝を活性化する効果が期待できる。

本研究では、パルスパワーが真菌の有用物質生産に与える影響を
解析することで、真菌由来の有用成分の増産を可能にする技術開発を
目指す。

葉の成長と画像解析

相田光宏x戸田真志x檜垣匠

画像解析による葉の形質の定量的評価
葉の形成にかかわる制御因子の機能解析

細胞形態イメージングを活用した熊本ローカル(地域)酵母のライブラリー構築と醸造応用

谷時雄x檜垣匠

本共同研究プロジェクトでは、熊本産の果物や花などの農産物、植物、土壌などから、熊本地域に分布する野生酵母をスクリーニングし、熊本
地域酵母(ローカル酵母)のライブラリーを作成する。スクリーニングにおいては、分離した野生酵母の細胞形態イメージングとrRNA遺伝子
解析による種同定情報をリンクさせ、新たな有用地域酵母の迅速分類同定法を確立する。構築した熊本ローカル(地域)酵母ライブラリーは、
酒類醸造や発酵産業への応用を目指す。